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魔法少女を職業として描いた世界観は、ファンタジーとリアルのバランスがほどよい――『株式会社マジルミエ』

 株式会社マジルミエ

魔法少女ものとしても、お仕事ものとしても読めるテイストが◎

世界や人類を救う的な存在、いわゆるヒーローを、社会活動の中にある一つの職業として扱う。本作がまさにそのパターンをベースにしているのだが、職業として扱われるのが「魔法少女」というのが心憎い。第1話冒頭、敵(本作では「怪異」)とのバトルシーンから幕を開けるのだが、「近距離魔法」「テンプレ5展開」など心くすぐるセリフの数々から、「業務実行」の一言で発動する魔法攻撃がグッド。「圧縮納品」に至るまで、絶妙なワードセンスがたまらない。

魔法少女、引いては魔法をシステム化というのはなかなか。一般的な魔法ものでは、魔法使用者の力量や才能、はたまたアイテム効果などに応じて発動する魔法の種類や威力が変化するもの。ところがシステム化された本作では、プログラムやデバイスを用いて相手に応じた魔法を選択し発動という、仮面ライダーやスーパー戦隊を彷彿させるような描き方が面白い。そこにさらに撃ち出せる魔法数を弾薬としてカウントするなどの設定があるのもいい。

そんな中、本作の主人公は第1話で急きょ魔法少女の手伝いをすることになった桜木カナ。企業面接に来ていた場で怪異と遭遇し、出動してきた魔法少女に協力するのだが、とにかく記憶力が優れていて、使ったことがない魔法に関する機器も以前に一度調べたことがあるだけで、マニュアルを覚えているのだ。この記憶力などの彼女個性が、この先ストーリーをどう彩っていくかも楽しみながら読めるのは興味深い。ちなみに、誤解と偏見を恐れず、カナはツインテールなのだが、魔法少女に欠かせない要素の一つだろう。

作品タイトルにもなっている、劇中登場の魔法少女派遣業を行うベンチャー企業「株式会社マジルミエ」には、カナが出会った魔法少女・越谷仁美などが在籍。なかでも社長の二子山は「魔法少女絶対主義者」であり、効率や利益よりも社員がやりたいことを第一に考えるというキャラクターで、思わずマジルミエに入りたくなってしまうほどだ。もちろん同業他社も存在するので、そのあたりのストーリー展開も見逃せない。魔法少女ものの新たなカタチであり、一つのお仕事ものとしても読めるのは素敵だ。


 株式会社マジルミエ

原作:岩田雪花 作画:青木裕 / 出版社:集英社

株式会社マジルミエ

3巻まで発売、2巻までレンタル中

【フリーライター】遠藤政樹

【フリーライター】遠藤政樹

映画やドラマ、アニメにマンガ、ゲーム、音楽などエンタメを中心にインタビューやスチール撮影ありのイベント取材、コラム、レビューを執筆。IT系や企業案件もこなせるフリーの編集・ライター。お仕事も随時、募集中。

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